電波の観測を行っている国立天文台 野辺山宇宙電波観測所の45mミリ波望遠鏡 |
ここで注意深い人なら、「電波というのは波長や振動数で表すとどこからどこまでの範囲を指すのか?」という疑問を持ちそうですが、実は電波天文学で扱う電磁波の波長の範囲や振動数の範囲というのは実はあまり明確ではありません。
電波天文学が扱う電波の範囲を決める要素は大まかに三つあります。一つ目は、大気の透過特性、二つ目が電波受信技術による限界、三つ目が量子ノイズなどによる理論的な限界です。
電波天文学で扱う上限の振動数は、おおよそ$\nu \sim 1$ THz 程度です。(1 THzは、$10^{12}$ Hzです。) 波長$\lambda$と振動数$\nu$の間には、真空中の光速を$c$として、$\lambda = c/\nu$の関係があるので、1 THzは波長では、おおよそ0.3 mmに相当します。天文学において、この振動数よりも大きな電磁波を扱う分野は、赤外線天文学という呼ばれ方をします。
この境界は、電波受信機(ヘテロダイン受信機)の技術的な限界で決まっているのですが、技術の発展にともなって、年々電波受信機で受信できる電磁波の上限振動数が上がる傾向にあり、電波天文学と赤外線天文学の境界が曖昧になりつつあります。
一方で、振動数が低いほう(波長が長い方)では、電離層による吸収によって、おおよそ10 MHz(波長で、30 m)が地上から観測できる限界ということになります。(もちろん、大気圏外に出ればこの限りではありません。)
次回は、大気の透過特性、つまり大気の窓について詳しく見ていくことにしましょう。